日々生きている中で様々な問題に出会う。さまざまな問題を抱えた人に出会う。
体調が悪い、人間関係がうまくいかない、お金が貯まらい、仕事に行き詰まる……上げていったらキリがないだろう。
問題を抱えた人は至る所にいるが、具体的に問題解決に動いて人となると、なかなかお目にかかれない。たいていは「問題だ問題だ」と騒いでみたり、同じところ回って動いている気分になっているだけだったりする。
自分が20代の前半に出会ったもので、今でも重宝している問題解決のフレームワークがある。
身近な若手には時々伝えていることだが、具体的な例も考えながら改めて整理して見たのがこの記事である。
問題解決までの基本的な流れ
効果的な問題解決の流れは一言で言えば、WHERE-WHY-HOWの順番に考えるということだ。
WHERE
例えば「売上改善」という課題に対して、いきなりHOWに飛びつくとたいていはとんちんかんな方向に行く。
- なんとなく過去にもやっていたからテレビCMを打つ
- 最近はインフルエンサーの影響が大きいらしいからインフルエンサーマーケティングをやる
- モチベーションを上げてもらうために営業インセンティブを出す
思いついたアイディアの中から、感覚で選んで提案をする。アイディアを出しているので、一見考えているようにも見えるが、うまくいく確率は低い。「売上が低迷している」という事象に対して、構造も把握していなければ原因の深掘りもしていない。
解決策を考える前にまずは問題のありかを絞りこんだ方がいい。
一口に「売上低迷」といっても、「どの商品カテゴリーが低迷しているのか?」「どの地域が低迷しているのか?」「ロイヤル顧客の売上が下がったのか?」「新規顧客が少ないのか?」など、可能性はいろいろ考えられる。
全体をぼんやりと見るのではなく、切り分けてみて、真の問題のありかを発見しようとすることで、問題への理解が深まる。別の表現で、解像度を上げるとも言わる。
WHY
真の問題のありかを発見したらからといって、解決策を考えるのはまだ早い。なぜその問題が起きているのかを考えていない状態では、結局コインの裏返しのようなアイディアしか湧かない。
サンプルの例で言えば、ヒートマップからヘビーユーザーの売上が落ちているようだと分かったが、なぜ売上が落ちたのかがまだ分からない。この段階で解決策を考えると、ヘビーユーザー向けの値引きクーポンを配るなど、場当たり的であり、利益をも悪化させるようなアイディアに留まることが非常に多い。
まずは、分かりやすいストーリーに飛び付きたくなる衝動を抑えて、原因を探ることが先である。
例えば、DAY1仮説としてこんな原因が考えられる。
- ヘビーユーザーは自社サービスの利用年数が長い人が多く、前の年に家電の買い替えをしたから今年は売上が減った。
- STAY HOMEの影響でアウトドア用品の売上が減った。
- 食品の宅配サービスが広がったので、ECサイトで食品を買う人が減った。
- 競合サービスが何か特別なキャンペーンをして、自社のヘビーユーザーが取られている。
WHEREのステップでしっかり分析をしていれば、WHYを考える際にも仮説が浮かびやすい。最初は吟味しようとせず、思いついたものを全て書き出した方がいいだろう。
検証をする際は、先に「ロジックが通っているか?」を考えて、それから「データが集められるか?」を考える方が効率的だ。
上記の例では4つの仮説を挙げたが、最後に挙げた競合サービスのキャンペーン以外は、1カテゴリーの売上低迷しか説明できていない。実際はほとんどのカテゴリーでヘビーユーザーの売上減少が見られることと照らし合わせると、ロジックが十分ではないと言える。
費用や工数がかかるアンケート調査、顧客インタビューの前にロジックが通っていない仮説を消し込むことで、効率的に原因を見つけられる可能性が高くなる。
HOW
ここまで来てようやく、有効な解決策を考えられる。
「競合が会員ランクプログラムを導入したことによって、ヘビーユーザーを取られていたのが原因で、売上が落ちていた」という調査後の解釈から、最初に思い浮かんだ打ち手を見直してみると、どれも的外れだと分かる。
- テレビCMを打つ
- インフルエンサーマーケティングをやる
- 営業インセンティブを出す
- ヘビーユーザーに向けて値引きのクーポンを配る
問題解決の8割は特定と原因究明にあるといっても過言ではない。その場の思いつきに飛びつかず、最後に解決策を考えるという順番が基本中の基本である。
具体的なHOWはWHYのステップと同じく、思いついたものを全て書き出すのがいい。
自社が業界のリーディングカンパニーなら、競合の真似をして会員ランクプログラムを導入するのも一手かもしれない。他にも、競合が扱っていない人気商品の販売権獲得に注力する、カテゴリーを跨いだ購買に特別なインセンティブを与えるなどのアイディアが湧く。
Try & Errorでスキルを磨く
WHERE-WHY-HOWは強力な道具だが、いい道具が手元にあるのと、道具を使いこなせるのは別の話である。今問題だと感じているものに対して、すぐに3ステップで考えてみるか、いいフレームワークを知ったで終わるか。
結局、この一歩目がやがて大きな差になるんだろう。